「一生モノ」だと思って買ったマンションが、今、最大の危機を迎えています。
築40年を超えるマンションの戸数は、20年後には現在の約3.4倍にまで膨れ上がる見込みです。
建物が老朽化する一方で、住人の高齢化も進む「2つの老い」・・・
いざ修繕や建替えを検討しようとしても、「連絡がつかない所有者がいて何も決まらない」という、いわゆる「マンションのゾンビ化」が全国で深刻な問題となっています。
そんな中、2026年4月施行の”マンション法改正”は、これまでの停滞を打破する大きな転換点となります。
「将来、このマンションはどうなるの?」
「建替えには全員の賛成が必要って聞いたけど、本当?」
「管理費や修繕積立金が上がって損をしないか心配……」
こうした不安を抱えるマンション所有者の方へ向けて、今回の法改正が資産価値をどう守り、どんな新しい選択肢を与えてくれるのか?
本記事では、現行ルールの問題点から新たな選択肢、そして所有者が今すべきことまで、重要なポイントをわかりやすく解説します!
1. 決議ルールの変更:「幽霊組合員」問題の解消へ
これまでのマンション管理における最大の課題は、「連絡がつかない所有者」や「総会に来ない無関心な層」、いわゆる「幽霊組合員」の存在でした。
この問題に対し、法改正により決議のルールが劇的に変わります。
現行ルールの課題:出席しない=反対扱い
従来、修繕などの決議を行う際、「全区分所有者」を母数とした多数決が必要でした。
そのため、出席者の間でどれだけ賛成が多くても、欠席者や所在不明者が多いと、その分はすべて「反対」と同じ扱いになり、必要な修繕さえ決まらない原因となっていました。
新ルール(2026年4月〜):出席者の多数決で可能に
今回の改正により、決議の「母数の計算」が見直され、管理不全を回避しやすくなります。
- 出席者の多数決:
区分所有権の処分を伴わない「修繕」などの事項(普通決議)は、全所有者ではなく「実際に集会に出席した人」の多数決(過半数)で行えるようになります。 - 所在不明者の除外:
裁判所の認定を受けた所在不明者を、決議の母数(分母)から外すことが可能になります。
2. 建替えに代わる「第3の道」:一棟リノベーション(建物再生)とは?
これまでは「だましだまし直して住む」か「多額の費用をかけて壊して建てる(建替え)」かの二択しかありませんでした。
しかし、法改正により「骨組みを活かして中身を新築そっくりに変える」という第3の選択肢が現実的になります。
なぜ今「一棟リノベーション」なのか?
建替えは、区分所有者の4/5以上の賛成が必要な上、一人あたり1,000万円〜2,000万円以上の持ち出しが発生することも珍しくありません。
それに対して、一棟リノベーションは、以下の理由で「現実的な選択」として期待されています。
- コストを大幅に抑えられる
基礎や柱(構造躯体)を再利用するため、ゼロから建てる建替えに比べて工事費を抑制できます。 - 「住み続けながら」の工事も検討可能
工事内容によりますが、建替えのように数年間完全に立ち退く必要がないケースもあり、生活への影響を最小限に抑えられます。 - 新築同等の性能へアップデート
単なる「修理」ではありません。配管の全面更新、断熱性能の向上、最新インターホンの導入、さらには共用部へのバリアフリー設置など、資産価値を新築に近いレベルまで引き上げます。
法改正による強力なバックアップ
今回の改正では、この「一棟リノベーション」を後押しする画期的な仕組みが導入されました。
- 多数決ルールの柔軟化
耐震不足などの一定の条件を満たせば、区分所有者の4/5以上の賛成(※状況により緩和要件あり)で、建物全体の一括改修をスムーズに決議できるようになります。 - 「高さ制限」の緩和で、広さと快適さを確保
古いマンションの多くは、斜線制限などのルールに当てはめると、今と同じ大きさで建て直せない「既存不適格」の状態にありました。
それが、今回の法改正では、耐震性向上のためのリノベーションを行う場合、自治体の許可により高さ制限などが緩和される特例が設けられました。これにより、断熱材を厚くしたり、共用廊下を広げたりといった「性能アップのためのスペース」を確保しやすくなります。
◤POINT◢
「建替えは高すぎて無理、でも大規模修繕だけでは限界……」というマンションにとって、一棟リノベーションは「コスト」と「性能」のバランスが取れた最も賢い選択肢になる可能性があります。
3. 老朽化対策の比較:「一括売却」vs「建替え」
マンションの老朽化が限界に達した際、所有者にとって最大の関心事は「売却と建替え、どちらが得か?」という点です。
法改正により、どちらの手法も4/5以上の多数決(耐震不足等は3/4、被災時は2/3)で実施可能になります。

💡判断のポイント
- 資金面の負担:
建替えは多額の自己負担金が発生するケースが多い一方、一括売却は売却益(分配金)を老後の資金などに充てられます。 - 法改正による後押し:
建替えでは、隣接地を取り込んで容積を確保しやすくする仕組みが整えられました。一方、一括売却はすべてのマンションに対象が拡充され、より現実的な選択肢となっています。
4.まとめ:2026年「マンション新時代」の幕開け。資産を守る決断を
これまでのマンション管理は、「所在不明の所有者」や「高すぎる建替えの壁」に阻まれ、身動きが取れないまま老朽化していくのを待つしかないのが実情でした。
今回の改正によって大きく変わったことのまとめです。
- 決議の円滑化: 「来ない人」に振り回されず、前向きな修繕・再生が可能に。
- 第3の道: 建替え一択ではない「一棟リノベーション」による現実的な長寿命化。
- 一括売却の拡充: 限界を迎える前に、資産を現金化して次へ進むという選択。

今回の改正は、所有者の「権利」を保護するだけでなく、管理を放棄しない「責任」を問い直す内容でもあります。
複雑な法的手続きが必要となる場面も増えるため、早めにマンション管理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、自分たちのマンションに最適なロードマップを描き始めることが、資産価値を守る第一歩です!
出典: 国土交通省「マンション関係法改正の概要(令和7年9月)」資料

\この記事を書いた人/
かなぱす行政書士事務所 林 佳奈
行政書士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
スパルタ教育の法科大学院で徹底的に磨き上げた「法律を読み解く力」と、逆境に立ち向かう「不屈のメンタル」が自慢の行政書士です。
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